長年介護職で勤めてきたけど、やはり異業種に興味がある、元々やりたかったことがある、と異業種に興味を持つことは誰もがあると思います。
しかし「もう30代だし」と尻込みしてしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護職から異業種への転職は30代でも可能かどうか、データを交えてご説明していきます。
この記事を読めば分かること
- 介護職の離職率は全産業の中で平均並み
- 30代で転職を考える人は多い
- 介護職から異業種への転職は30代でも充分可能
介護職から異業種への転職、30代でも可能?
介護職の離職率は平均並み
厚生労働省が発表した令和2年転職者実態調査によれば、医療福祉業界の入職率は9.6%で、離職率は8.6%でした。
全産業の平均入職率が8.6%、離職率が8.1%のため、医療・福祉業界は入職率、離職率ともに平均より高く、人材の流動性が大きいことが見てとれます。
では、介護職の転職率を見てみましょう。
公益財団法人介護労働安定センターの調査では、令和2年度の介護職の離職率は14.9。
これは全産業の平均離職率 15.6%(厚生労働省令和元年雇用動向調査結果)を 0.7 ポイント下回っており、離職率に改善の動きが見られていることがわかります。
ですが改善したとはいえ、離職率はおよそ平均並といったところ。
おそらくコロナ禍もあって、安定したニーズのある医療・福祉業界で働こうとする異業種の方や、ライフプランを見直し、やはり安定した医療・福祉業界で働き続けようと思う人が増えていることは推測できます。
30代の転職動向は?
しかし、厚生労働省が行っている令和2年転職者実態調査によれば、転職率は25歳からぐんと増えていることがわかります。
令和2年度の転職者のうち、15.1%は25歳~29歳。
ついで14.1%は30歳~34歳、35歳~39歳も12.5%と、およそ転職者の26%は30代であることがわかります。
転職理由は?
転職者全体で見ると、転職理由の76%は「自己都合」であり、その中で最も大きな理由は「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」で、ついで「満足のいく仕事内容では無かったから」「賃金が低かったから」と続きます。
30代も同じような順位ですが、特に30歳~34歳では「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」という理由が36.7%でした。
知識や経験も少なく、とりあえず所属する会社でがむしゃらに働く20代とは違い、30代は仕事にも慣れ、仕事はもちろんのこと、会社のことも広い視野で見れるようになります。
その中で、自分のキャリアを振り返る方は多いようです。
また結婚や出産、引っ越しや親の介護など、ライフプランの変化が起こり、自分の人生を見直す機会が訪れるのも30代の特徴と言えます。
つまり30代というのは改めて自分のキャリアを見直す時期であり、30代に転職を考えるのはむしろ当然のこと、というべきでしょう。
異業種への転職は可能?
厚生労働省が発表した「令和3年版 労働経済の分析 -新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響-」内に掲載されている「異業種間移動の状況」によると、2013年から2019年の間で、医療・福祉業界で働いていた人が転職先として選んだ業界は「卸売・小売業」が最も多く、およそ4.1万人が転職先に選んでいました。
同業種を転職先に選んだのはおよそ3.1万人のため、つまり異業種への転職は充分に可能ということができます。
ちなみに、卸売・小売業とは「生産者から商品を購入して販売する業者」を指します。
例えば食品業界を例にあげてみましょう。
食品はまず食品メーカーが自社工場で食品を作ります。
それを卸売業者が買い取り、スーパーやコンビニ、ドラッグストアと言った小売業に売却します。
そして小売業は消費者へ商品を販売する、という流れになります。
卸売・小売業とは大まかに言えば卸売業者やスーパー・コンビニ、ドラッグストアなどを指し、一定のニーズがあるため人材の流動も大きく、求人も多いのが特徴です。
この業界はもとも他業種からの転職を多く受け入れている業界であり、福祉職だから特別転職しやすいというわけではなく、どの業界にいても転職しやすい、つまるところ未経験でも転職しやすい業界ということができます。
同様に「製造業」や「宿泊業・飲食サービス業」も異業種からの転職者が多く、同様に未経験から始めやすい職業と言えるでしょう。
製造業は前述したメーカーであり、宿泊業はホテルなど、飲食サービス業はレストランなどを指します。
以上から、福祉職でも充分異業種への転職は可能ということができます。
参考 厚生労働省 令和3年版 労働経済の分析 -新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響- 54図 産業間労働移動の状況(異業種間移動の状況)
福祉職のスキルを活かせる異業種は?
また、福祉・医療業界の転職者が多い業界としては「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」があげられます。
生活関連サービス業とは冠婚葬祭業や理美容などがあげられ、同様に娯楽業は娯楽施設での勤務が多く、スポーツジムのトレーナーなども含まれています。
医療福祉業界自体がサービス業に数えられることも多く、対人業務がメインとなってくるサービス業への転職は、介護職の対人スキルを活かせる業界ということができるでしょう。
また教育・学習支援業とは、学校はもちろんのこと、職業訓練施設や学習塾、習い事教室などがあげられ、こちらもまた対人スキルをアピールできる職種ということができます。
このように、介護職の対人スキルを活かし、異業種に転職することも充分可能と言えます。
また転職にオススメの異業種も別の記事でご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
介護職から異業種にチャレンジする30代に伝えたいこと
前述したように、30代は転職率が上がる年代であり、同時に介護職から異業種への転職も十分可能という結果が出ています。
衝動的にならず、時間をかけて準備しよう
未経験歓迎の求人であれば、30代はまだまだ働き盛りであり、採用される確率は高いといえます。
しかし待遇に関しては企業次第なので、資格などを取得して準備した上で転職活動を行うことも、あなたにとってよりよいキャリアになることは間違いありません。
在職中に学ぶことが難しい場合でも、退職後雇用保険を受給しながら、給付金の対象となる教育訓練を受けて資格を取得することもできます。
そちらでしっかり知識とスキルを培い応募した方が、より「ここで働きたい」という熱意のアピールにつながることもあります。
ぜひ自分の行きたい業界と、自分のよりよいキャリアを鑑みて適切な方法を選択しましょう。
自分で自分のキャリアを限定しない
30代に入り「もう30代」「今から転職なんて難しいだろう」と思っていらっしゃる方はきっと多いことでしょう。
私自身もそう思い、転職に尻込みしていました。
しかしライターとしてお仕事をいただく中で、契約先の方々から「まだまだお若い」と言われることが多く、自分で自分のキャリアを限定しすぎていたのでは?と気付くことができました。
実際、データにもあるように、30代で、介護職から異業種へ転職した方々は数多くいらっしゃいます。
その気づきのおかげで、私自身30歳になってから、長年勤めていた福祉職を転職し、現在はフリーランスのライターとして独立することができています。
30代はまだまだ多彩なキャリアが描ける年齢です。
ぜひ色んな人のアドバイスをもらいながら、自分にとってよりよいキャリアを描いていってもらえたらと思います。