介護職から異業種への転職を考える際、サービス業への転職は皆さん思いつきやすいのではないでしょうか。
しかしサービス業、と言っても実は幅広く「こんな職業もサービス業?」と思うような業種が含まれていることも。
そこで今回はサービス業についてご紹介した後、オススメのサービス業や介護職だからこそ活かせるスキルなどをご紹介していきます。
介護職はサービス業?
そもそもサービス業とは
サービス業とは、文字通り「サービス」を提供する仕事です。
では、サービスとは何でしょうか。
例えば農業であれば育てた農作物を、製造業であれば生産した物品を消費者に提供しますが、「サービス」を上手く言葉にすることは難しいですよね。
しかし、なんとなく「サービス」とはカタチのないものだ、という感覚は皆さんお持ちなのではないでしょうか。
つまりサービス業とは、おもてなしの行為や気配りなど、モノではなく、顧客に「効用」や「満足感」を提供する仕事といえます。
もちろん満足感を提供するための手段としてモノを使用することもありますが、他の産業のように、モノを授受することが重要なのではありません。
モノを授受することで「満足してもらう」ことが、サービス業の本質ということになります。
介護職はサービス業?
よく「介護職もサービス業」と言われますが、実際はどうなのでしょうか。
そもそも、私たちが良く言う「業種」「業界」の分類は、日本の公的統計のため使用されている「日本標準産業分類」によるところが大きいです。
これは日本の統計基準として総務省が告示するもので、産業の発展を踏まえ、1949年に設定されてから何度も改訂が加えられてきました。
少しややこしいのが、同じような名前の「日本標準職業分類」というものあり、それぞれ「産業」と「職業」の分類を告示しています。
それぞれ大分類と中分類があることは変わりませんが、「産業分類」は農業や製造業など、大まかな枠組みの業種が分類されています。
一方「職業分類」は「管理的職業従事者」や「サービス職業従事者」など、労働者の従事している職業によって大まかな分類が決められているのです。
そのため、産業分類ではサービス業に分類されていないのに、職業ではサービス業に分類されている、ということもあるのです。
例えば「産業分類」において、サービス業と名の付くものは大分類でいえば5つ。
「学術研究、専門・技術サービス業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「複合サービス事業」「サービス業(他に分類されないもの)」があげられます。
実は医療・福祉はサービス業としては分類されていないのです。
しかし一方で、「職業分類」では、「サービス職業従事者」の中に介護サービス職業従事者として介護職が分類されています。
このように介護職が分類されているからこそ、現在「介護職はサービス業」という認識が為されるようになっているのでしょう。
業界か職業かで分類が異なる介護職ですが、その本質は利用者さんに寄り添い、快適な生活を送っていただくことです。
そのため、幅広いサービス業のなかでも、同じようなスタンスで利用者さんに向き合っている業界や業種あれば、培ってきたスキルを活かせるのは言うまでもありません。
そこで、ここからは産業や職業別にオススメの「サービス業」をご紹介していきます。
介護職からサービス業、オススメの業界は?
職業紹介・労働者派遣事業
日本標準産業分類の大分類「サービス業(他に分類されないもの)」には、「職業紹介・労働者派遣事業」が分類されています。
いわゆる「人材業界」ですね。
クライアントは人材がほしいと思っている「企業」、もしくは就業したいと思っている「求職者」です。
皆さんも登録したことのある転職サイトなども、実際のところこの「職業紹介事業」に含まれています。
特に求職者の人生を考え、寄り添い、悩みを聞きながらよりよいキャリアプランをアドバイスしていく、というのは、介護職、ひいては人を大事にする福祉職が培ってきた「観察力」などを活かせる職業と言えるでしょう。
また人材業界は求職者以外にも、企業に向けた人事活動コンサルティングや、求人広告の作成など、幅広いキャリアパスが描けるのも特徴です。
また、皆さん実感されていることだと思いますが、介護職は求人・転職サイトも多いですよね。
自身の経験を活かす、という意味では介護職専門の人材業界に転職し、求職者さんの悩みを聞きながらよりよいキャリアを共に考える、という仕事も、自分のキャリアチェンジに繋がるかもしれませんね。
メンテナンス業
自動車整備や機械等修理、ビルメンテナンスなど、製造業とは少し異なり、設備の持続を業務として行う業界もまたサービス業にあたります。
資格が充実しているため一生モノのスキルにできる仕事です。
当たり前の毎日が続くことは尊ばれるべきことであり、メンテナンス業界はそれを支えている業界とも言えます。
介護職同様、こつこつと日々の業務を積み重ねていきたい方にはオススメの職業であり、特に体を使って動くことが嫌いではない人は働きやすい業界を言えるのではないでしょうか。
ちなみに、接客業は?
また、同じように人に寄り添うという意味では、宿泊業や飲食サービス業もオススメではあります。
しかし、現在のコロナ禍においては、中々先の見通せない業界であることは事実です。
一方、安定したニーズのある介護職は離職率が低下しているのが現状。
もちろん自分のやりたいことがあるという場合は別ですが、ぜひ現状も把握しながら転職活動は行いましょう。
ちなみに介護職の現状においては別の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
介護職からサービス業、アピールポイントは?
前述したように、サービス業とは顧客に「満足度」を抱いてもらう業界です。
そのために必要なのは2つ。
- 顧客はどうしたら満足するのか見極める
- 顧客が満足するアプローチ方法を考える
です。
そのために必要なスキルは、実は介護職でも充分培っています。
観察力
介護職というのは、日々利用者さんと接する中で、その変化を敏感に感じ取る職業です。
検温や食事量など、数値化できるデータはもちろんのこと、利用者さんと接する中で、しんどそうに見えたり、普段と違うと感じたり、いわゆる数値化できない変化も敏感に感じ取ってきたことでしょう。
その上で、なぜしんどいのかさまざまな理由を考え、それを解決するよう動くことも介護職の仕事です。
そのために必要な「観察力」と、知識を伴った行動をした経験は、きっとサービス業でもアピールできるスキルです。
ぜひ自分のエピソードを言葉にした上で、アピールしてみましょう。
想像力
また利用者さんの言動から「本当の気持ち」を想像し、それを引き出したり、あるいは適切に対処するのも介護職の仕事です。
実際、利用者さんの表層の言葉だけではなく、その裏にある真意を見抜くことも業務でやってこられたのではないでしょうか。
よく「あいつがうるさい」と言ってくる利用者さんがいたとします。
でも、本当に静かにしてほしいから言ってくるパターンだけでは無かったはずです。
むしろ、それを話題にして職員と関わりたい、というパターンもあったのではないでしょうか。
このように、言葉の表層だけ捉えるのでは無く、その中から本当の願望を汲み取り、実行することでよりよいサービスの提供に繋がった経験は、きっと対人業務では強いアピールになります。
実際、私自身インタビュー記事を書いていますが、中には「何が言いたかったっけ?」という方も。
その際、介護職で培った汲み取る力が活かせていると実感しています。
介護職は誰でもできるからアピールにならない、と悲観する必要はありません。
人を相手に仕事をしてきたあなた方は、実は仕事の中で活かせるスキルを日々磨いて来られたのです。
ぜひそれらに気付き、あなたのよりよいキャリアのために活かしてもらえたらと思います。