もうすっかり私たちの生活に根付いた「ストレス」という言葉。
何となく「心に不調を来すなにか」というイメージはありますが、実際どのようなものかふわっとしたイメージだけの人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「そもそもストレスとは?」というところから、介護職特有のストレスと、その改善方法についてご説明していきます。
介護職に限らず感じる「ストレス」とはそもそも何?
『ストレスという用語は、もともと物理学の分野で使われていたもので、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を言います。
ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。
医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。』
引用 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳 ストレス軽減ノウハウ
このように、ストレスという言葉自体の意味は「外部から与えられる刺激で歪んだ状態」です。
さまざまなイメージが先行し、ストレス=悪いというイメージが定着していますが、外部から与えられる刺激なのでもちろんポジティヴなものもあり、活力となる場合もあります。
刺激がどのように影響するかは人それぞれ
例えば、職場の上司Aさんと、部下のBさん、Cさんがいたとします。
Aさんは激励のつもりで、Bさんに「もっと頑張ろうな」と言いました。
それを言われた部下のBさんは「自分を見てくれている、もっと頑張ろう」と、さらに仕事を頑張るようになりました。
それを見ていた上司のAさんは、この方法がいいんだと自信を持ち、部下のCさんにも同じように「もっと頑張ろうな」と言いました。
しかし、部下のCさんはそれで「まだまだ自分は努力が足りないんだ」と落ち込んでしまい、どうすればいいのか分からなくなり自分を追い込むようになってしまいます。
このように、同じストレッサー(外部からの刺激)であっても、それがどのように影響するかは、本当に人それぞれなのです。
自分を追い込む必要はない
ここで大事なのは、「こういう風に受け止めてしまう自分が悪いんだ」と思わないこと。
自分自身を必要以上に責めると、さらに自分に自信が無くなり、自分を追い込んでしまうようになります。
そしてさらにメンタルの不調を引き起こし、負のスパイラルに陥ってしまう可能性が高いです。
部下からすれば上司の言葉は絶対に思えるかもしれませんが、その会社でそういう構造上の関係性になってしまっただけであり、絶対視する必要はまったくありません。
もし職場が違えばまったく違う上司がいて、まったく違う言葉を受けたことでしょう。
ただ、相性の良い人間関係の中で仕事できるかどうかは、実際入職してみなければわからないものです。
社会的な生活を送る以上、人とのコミュニケーションは必須。
つまり、仕事をする以上、人と関わる上でさまざまなストレスと付き合っていく必要がある、ということは覚えておきましょう。
介護職にありがちなストレス
利用者との関係
まず、介護職にありがちなストレスとして、「利用者との関係」があるでしょう。
「人の役に立ちたい」「人のためになる仕事がしたい」という思いがあって、介護職を選んだ方は多いと思います。
しかし、介護職はデフォルトな「人」ではなく、「○○」という名前を持ち、良い人や悪い人、という簡単な区別でわけられない、実にさまざまな人と関わる事になります。
まずその時点で刺激は多く、今まで関わってきたことのない人と関わるのは、良い意味でも悪い意味でもストレスとなることでしょう。
良い刺激になる方ばかりでないことは、言うまでもありませんよね。
角の立つ言い方や乱暴な言動、さらには問題行動など。
そのような行動をする利用者であっても職員として受け止める必要があり、そこにストレスを感じる人も多いのではないでしょうか。
職員同士の人間関係
厚生労働省が毎年調査している雇用動向調査結果によれば、令和2年度の転職・入職者が前職を辞めた理由として、「職場の人間関係が好ましくなかった」が男性は8.8%、女性は13.3%でした。
これは「その他の理由(契約の終了)」を除けば男性は3位、女性は1位であり、職場の人間関係は仕事を続ける上で大きなキーポイントとなっていることがわかります。
参考 厚生労働省 令和2年雇用動向調査結果
毎日顔をつきあわせるだけではなく、その人と協力して仕事をしていく以上、ストレスを感じやすいのは言うまでもありませんよね。
前述したAさんとCさんの関係はあくまで一例ですが、さまざまな「相性」が合わず、そこから相互不理解が発生しメンタルが疲弊して転職・・・・・・というのも、充分考えられる理由と言えます。
労働条件がストレス
公益財団法人介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」において、令和2年度における「労働者の労働条件・仕事の負担に関する悩み等」では「人手が足りない」が 52.0%で最も高く、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が38.6%でした。
参考 公益財団法人介護労働安定センター 令和2年度 介護労働実態調査結果について
人手不足ということは、それだけ職員一人ひとりへの仕事量が多くなるということ。
介護職はただでさえ体力を使う仕事なのに、それでいて賃金が安ければモチベーションにつながりますよね。
さらには現在のコロナ禍もあって、自身の健康への不安もあります。
この状況をストレスと感じることは、むしろ当然といえるでしょう。
介護職にありがちなストレス、改善方法は?
では、これらのストレスはどのように改善していけるのでしょうか。
ストレスへの対処法を「ストレスコーピング」といい、人によって適切な対処は異なりますが、大きくわけて3つあります。
下記にお伝えしていきますので、参考にしていただけたら幸いです。
1.人に話す
ストレスコーピングの中には「ストレスによって引き起こされた不安感や怒りなどの感情を、周囲の人に聴いてもらい発散する」方法があります。
わかりやすく言うと「愚痴を聞いてもらう」ことですね。
もし仕事上のストレスを誰かに話すことで発散でき、「また仕事頑張ろう」となるのであれば、それは上手にストレスに付き合えているということ。
もちろん、友人との会話で愚痴ばかり言っていては相手も疲弊し、人間関係の破綻に繋がりかねませんので、バランス感覚は必要となります。
しかし、仕事で感じたストレスを近しい誰かに話すことは、ストレスと上手く付き合っていく方法のひとつと言えるのではないでしょうか。
2.改善を試みる
ストレスコーピングの中には「ストレッサーを周囲の人の協力を得て解決する方法」もあります。
つまり現場で自分の感じているストレスを職場に相談し、なんらかの対処や処遇をはかってもらう方法です。
継続的にストレスが引き起こされる環境では、人に話すだけでは解決になりません。
そのストレスの元になっている原因を職場に相談しましょう。
例えば、職場の人間関係は転職理由の上位に上がるほどの問題ですし、そもそも職場という環境自体が、構造上の関係性もあってハラスメントも発生しやすい環境です。
もちろんそれを言うこと自体に葛藤もあると思いますが、人手不足が指摘されて久しい介護業界において「働きたいけど悩んでいる」というアピールは、ここで働きたいというアピールになりますし、気にする必要はありません。
ぜひ一度、相談してみてください。
3.職場を変える
ストレスコーピングの中には「可能な限りストレッサーから距離を取ってストレスを無くす方法」もあります。
つまり、ストレスの原因ともなる職場を異動、もしくは離職することが、職場で感じているストレスへの対処の最終手段であると言えます。
相談したけれども改善が図れない場合や、もしくは自身がストレスを感じている状況を職場と共有できない場合は、異動、もしくは転職を考えましょう。
その方があなたのよりよいキャリアを描けるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「そもそもストレスとは?」というところから、介護職特有のストレスと、その改善方法についてご説明してきました。
ぜひ第三者の意見も参考にしながら、ストレスとどのように付き合うべきか考え、あなたのよりよいキャリアを描いていってくださいね。