理学療法士は、患者さんが自立した生活を送れるよう支援する素晴らしい職業です。
しかしながら、インターネットで「理学療法士」と検索すると、あとに「やめとけ」というネガティブなワードが検索結果に表示されてしまいます。
そんな光景を見た現役理学療法士の中には「このまま働いていて大丈夫だろうか」と不安になる方もいるでしょう。
そこで本記事では、以下について解説します。
- 理学療法士がやめとけといわれる理由
- 理学療法士であるメリット
- 理学療法士はやめとけに対してとるべき行動
この記事を読めば現役理学療法士が安心でき、将来に向けてとるべき行動が何かわかります。
ぜひ最後までお読みください。
理学療法士がやめとけといわれる理由
それでは、理学療法士がやめとけといわれる理由について以下で解説していきます。
給料が安いのに出費は多い
理学療法士の給料は日本人の平均年収と比較すると低く、厚生労働省の令和3年賃金構造基本統計調査によると約430万円であることがわかります。
一方国税庁の令和3年民間給与実態統計調査によると、日本人の平均年収は443万円です。
低いとはいえ、日本人の平均年収とそこまでは大差ありません。
しかし、理学療法士は知識や技術をつねにアップデートするため、各種研修会へ半強制的に参加させられることがあります。
また、その費用は自己負担になることが少なくありません。
1回あたりの研修会では1万円を超えるものも珍しくはないため、月に1回でも参加すれば大きな出費になるでしょう。
半強制的に給料がカットされるようなものです。
頑張っても給料に反映されない
病院や施設の収益は「診療報酬」や「介護報酬」が基本になっています。
リハビリにおいても「1単位20分につき〇〇円」と定められており、新卒でも勤続20年を超えるベテランでも、職場に貢献できる収益は同じなのです。
つまり、理学療法士ががんばって資格をとったり、新たな技術を身に付けたりしても、職場は給料を上げる必要性を感じないということ。
どんなに素晴らしい治療結果を出そうとも、保険点数による仕組みである以上、給料には反映されにくいのです。
参考までに自身の経験からお伝えすると、私は合計3法人での勤務経験がありますが、昇給額は平均2,000円程度でした。
年間2,000円の昇給では20年働いても4万円、30年働いても6万円しか年収が上がりません。
この現状を知ると、やめとけといわれるのも納得できるのではないでしょうか。
理学療法士は飽和状態になっている
理学療法士がはじめて日本に誕生したのは、1966年のことです。当時は理学療法士の数が圧倒的に足りず「高い給料を払うからうちで働いてほしい」と引く手あまたの状態でした。
しかし今は養成校が増え、毎年の国家試験合格者は1万人を超えています。
厚生労働省の理学療法士・作業療法士の需給推計によると、理学療法士は需要に対して供給が増え続け、2040年にはその数が需要の1.5倍になる見通しです。
よって、以下の脅威が予想されます。
- 転職したくても求人が少ない
- 専門性の低い理学療法士は淘汰される
転職を希望しても供給過多の状態であるため、転職先が見つかりにくくなります。良い条件の勤務先がないというわけではありませんが、10~20年前と比較すると見つけにくいでしょう。
また、専門性をしっかりと磨いて周りと差別化できる能力を身に付けていかなければ、淘汰される可能性もあります。将来的に専門性の低い理学療法士は、手が足りていない職種のフォロー要員になるのではないでしょうか。
業務量が多く体力のきつさを感じる
理学療法士は、以下のように多くの業務をこなします。
- 臨床業務
- 書類業務(計画書、カルテ、患者サマリーなど)
- カンファレンス出席
- 係・委員会活動
- 後輩・学生指導
- 勉強会
- 研究・学会発表
一日に18~21単位ほどの取得がノルマになることがあり、定時に近い時間まで臨床業務をしなければなりません。
臨床の合間にカンファレンスや後輩・学生指導などがあると、定時で仕事を終えることはまず不可能です。臨床業務のあとに書類を作成し、残業になることがほとんど。
人によっては自分の仕事を終えたあとに、研究や学会発表の準備・手伝いに時間を割かれ、家に帰る頃には21時過ぎということも珍しくありません。
20代の若者ならがんばれるかもしれません。しかし30代、40代と年齢を重ねれば、体力のきつさを感じるようになってきます。
人間関係に悩む
人を相手にする仕事のため、人間関係に苦労することが多いでしょう。
同僚や上司との関係がうまくいかないこともあれば、他職種と相性があわなくなり病棟に行くのが嫌になることも。
また、担当患者さんとの相性が悪くなってしまうこともあります。
リハビリがうまくいかず、信頼関係がなかなか構築できないと、毎日のリハビリが苦痛と感じる方もいるでしょう。
中には人間関係のトラブルで思い悩み、うつ傾向になる人もいるほどです。
プライベートを犠牲にすることがある
業務後や休日を使い、勉強会や社外活動に参加することが少なくありません。
特に勉強会においては「自己研鑽」と称し、半強制的に通わせられることもあります。
ちなみに理学療法士の年間休日数は勤務先により異なるものの、年間110日程度が平均です。
一般企業であれば大型連休・盆・年末・正月に加え夏季休暇などを採用しているところもあります。
理学療法士の休日は少ないうえに、限られたプライベートの時間を業務に使わないといけないのです。
急な休みの対処が大変
多くの職場では患者さんは担当制であるため、自分が休みの時は他の人が代診します。
しかし急に休まなければならない時は、どの患者さんを誰に代診してもらうか、調整が必要です。
特に外来や訪問リハビリに従事している理学療法士では、フォロー要員の確保が困難なことも。
休みの対処が大変なのを理由に、できるだけ休まずに無理して出勤する人も少なくありません。
AIに仕事を奪われる
AIが発達してきたことで、理学療法士の職域に危険が迫っているといわれています。
というのも、今まで人の手や目で行ってきた業務をAIが担えるようになるからです。
代表的なものに動作解析装置があります。
歩行時の重心動揺、速度などの各パラメータを詳細に解析でき、今まで主観的・抽象的だった考え方が通用しなくなり、客観的な指標で示されるようになります。
AIに仕事をすべて奪われないようにするためには、機器を使いこなしたり、AIが担えない専門性に特化したりしないとむずかしいでしょう。
理学療法士のメリット
では、本当に理学療法士はやめておいた方が良いのでしょうか?
以下では理学療法士だからこそのメリットを紹介します。
夜勤はなく生活リズムが乱れにくい
理学療法士は日中のリハビリテーション業務を主に行うため、夜勤はほとんどありません。
業務量が多いとはいえ、看護師や介護士のように不規則な勤務にならないのです。
一定の生活リズムが確立されている理学療法士は、他の医療・介護職と比較して生活が乱れにくいと考えられます。
そのため体調を整えやすく、夜勤業務のあとに寝て休むという休日の使い方をしなくてすみます。休日は自分の用事を済ましたり、友人と遊んだりすることも比較的しやすいでしょう。
やりがいがある
理学療法士は障害をおった方の社会復帰を手助けする仕事です。
自分でベッドから起きられなかった方が、自分の足で歩いて自宅に帰る姿を見ると、大きなやりがいを感じます。
また、患者さんからの「ありがとう」という言葉は、日頃の苦労を忘れるほどにうれしいものです。
大変なこともたくさんありますが、やりがいがあるから続けたいという人も少なくありません。
資格を活かせる
理学療法士の知識や経験を活かせば、別の職種で働くことも可能です。
供給が増えているとはいえ、医療や介護の知識は今後の社会で必要とされるものです。
よって、それらを活かしやすい分野に参入できるということ。
臨床業務以外の働き方を考えれば、可能性は広がります。
理学療法士はやめとけに対してとるべき行動
「やめとけ」といわれれば、心が揺らいでしまうこともあるでしょう。
しかし、理学療法士を続けながらでもできる対策をまずは考えてみてはいかがでしょうか。
以下で、「やめとけ」に対してとるべき行動について解説していきます。
職場を変える
給料・残業・人間関係などに不満がある場合は、職場を変えることをおすすめします。
日本理学療法士協会の理学療法白書2016によると、退職理由について以下のことがわかっています。
- 仕事内容・待遇への不満が理由の退職は20.7%
- 人間関係が理由の退職は12.8%
約3割の人が給料や人間関係を理由に退職しています。つまりそういった理由で退職することにとまどう必要はないということです。
ご自身の心を犠牲にしてまで働きにくい職場にいる必要はありません。
また、給料においても働く職場を変えるだけで大幅に上がる可能性があります。
おすすめは訪問リハビリの分野です。
訪問リハビリではインセンティブ制度を導入している職場があり、一月あたりの訪問件数が一定数を超えると、件数に応じて手当がつく仕組みになっています。
たとえば一月の訪問件数が80件を超えると、1件につき4,000円程度の手当がつくということです。
一月に100件訪問すれば、インセンティブのみで4,000円×20件=80,000円が給料に上乗せされます。
これを一年間続ければ、年収が約100万円上がる計算です。
このように理学療法士として働くことに変わりはなくとも、働きやすい環境や高い給料がもらえる職場は存在するのです。現状に不満を感じるのであれば、職場を変えてみましょう。
訪問リハビリに興味がある方は、「訪問リハビリのやりがい8つとつらいところを紹介します!」の記事も参考にしてください。
もし転職するなら、今後供給がさらに増えることを踏まえ早めに決断しておくことも大切です。
副業する
収入に不満がある場合は空いた時間をつかって副業してみましょう。
理学療法士が取り組みやすい副業には以下のものがあります。
- セミナーの講師
- 週末整体
- トレーナー
日頃の臨床で得た経験をダイレクトに活かせ、本業の理学療法士においても役立つ知識やスキルが増やせるためおすすめです。
また、日中に臨床で体を動かして疲れていても、在宅で行える副業もあります。以下の副業は特に人気です。
- Webライター
- プログラミング
- せどり
未経験から始めると最初は思った以上に稼げないこともありますが、月に1万円稼げるようになると、徐々に3万円、5万円と伸びやすい副業です。
月に5万円の副業収入があれば、年収は60万円もアップする計算です。
「今の職場をやめようとは思わないけど、金銭的には不満がある」場合は、副業をおすすめします。
出世する
供給過多になるであろう業界で生き残るためには、職場に必須の人材になることです。
経験年数が長くても、若手と同じ働きしかできなければ職場での需要がなくなるからです。
何らかの役職につけるよう、今の職場で出世を目指すと良いでしょう。
出世のためには、職場に価値を提供することです。後輩の育成や、周りがやりたがらないことを積極的に受け入れたり、職場の理念に沿った働きぶりなどを形で示したりすると良いでしょう。
ただし、出世できる環境であるかの見極めは重要です。
たとえば年功序列で役職が決まる職場では、自分よりも年齢が上の方が多ければまったく昇進できないこともあるからです。
そのような場合、職場を変えた方がいいでしょう。
起業する
理学療法士のスキルを活かして起業し、整体院などをはじめれば成功できるチャンスがあります。
料金は自由に設定できるため、技術と集客次第で大きく稼ぐこともできるでしょう。
また、セミナーの講師であれば今はオンラインでもできるため、ハードルはあまり高くありません。
起業するのであれば、今の職場で積極的に外部活動など行いつつ、集客の下地を作っておくとよいでしょう。
知識や経験が活かせる職につく
理学療法士で経験した医療・介護系の知識を活かせる仕事には、以下のものがあります。
- ケアマネジャー
- 行政職
ケアマネジャーは、介護保険分野で活躍できる職種です。
要介護者はさまざまな疾患を抱えているため、医療的知識をもった理学療法士がケアマネジャーになれば大きな強みになります。
行政職においては、理学療法士を市町村の職員として配置するところも増え、地域包括ケアシステム構築に向けた重要な職種と認知されてきています。
それでも理学療法士をやめたい時は一般企業へ転職を
本記事では、以下の点について解説しました。
- 理学療法士がやめとけといわれる理由
- 理学療法士であるメリット
- 理学療法士はやめとけといわれたらとるべき行動
理学療法士がやめとけといわれる理由は多いものの、活躍できる分野はまだまだ多くあります。
また、金銭的な不安や供給過多の問題も、副業や専門性の特化により解決できると考えられます。
しかし、それでも理学療法士をやめたいと思った時は、一般企業への転職を検討してみてはいかがでしょうか。
理学療法士の知識や経験は、一般企業で活かすことが十分可能です。
実際に福祉用具関連、医療機器メーカー、ハウスメーカーなどで活躍する方もいます。
もし理学療法士をやめて一般企業への転職を検討される場合は、リジキャリの無料相談をご活用ください。医療資格をもったコンサルタントが手厚くサポートいたします。